暮らしの中で、
道具として価値を持ち、
美しいオブジェクトとして
日常の風景を
作り出してきた鋳物。
変化していくその表情は、
時として人間さながらの、
非常に豊かで、
味わい深い表情を
浮かべます。
鋳物の本質は、
長い時間を蓄えながら、
その刻みゆく今に、
滲み出てくるのです。
砂を固めて作った型に高温で溶かした金属を流し込んでつくられる鋳物(いもの)。
その中でも鉄で作られた鋳物「鋳鉄(ちゅうてつ)」は、古くから身近な素材としてさまざまな道具に使われ、人々と共に時を過ごしてきました。確かな存在感と安心感を湛えた鋳鉄は、現代の生活の中でも変わらずその魅力を放ちます。
長い時を経て作りだされる「錆び」、人々が幾度も触れてきた「痕跡」、そして、古くより作り続けられてきた鋳物そのものが持つ「表情」。鋳物の本質を「蓄積された時の記憶」と捉え、時間をかけて朽ちていく様を美しく表現してます。
鉄のもつ重厚感はそのままに、冷たさを和らげてくれる鋳物ならではの穏やかな曲面。鋳肌の素朴さと相まって、温かみを感じさせてくれます。その存在は、生活の中に美しい所作を生み出しささやかな上品さをもって空間を演出します。